いくらプーチンが嫌いだからって(苦笑)

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昨日の産経新聞に掲載された木村汎(きむらひろし)氏の論文。
木村氏はソ連・ロシアの研究者であり専門家であるが、
産経新聞に載るロシア論に関する限り、その分析はいまいちだと感じていた。

昨日の文章を読んで、
「とうとうここまで来ちゃったか。」と思った。
全文は最後に転載してあるが、
赤字を施した該当部分を抜き出しながら
ちょっと突っ込んでみよう。

「一般的にプーチン大統領は、米欧諸列強から経済、その他の支援を得て、人民が下から反乱を起こし、「レジーム・チェンジ(体制転換)」を試みる動きに嫌悪感を抱いている。」

いや~、プーチン氏に限らず、まともな人なら大概は嫌悪感を抱くでしょう。
大国が自国の利益のために他国の政権転覆工作をやる。
アラブの春もそうだし、2014年のウクライナ政変もそうだった。
私に言わせれば「薄汚い不正義・悪徳」であり
これに「好感を抱く」のは
工作を仕掛ける側及びそれによって利益を得る少数の者だけだろう。

「ロシアはアサド政権から数々の軍事的、経済的な便宜や利益を得ており、同政権が万一崩壊すれば、ロシアはそれらを一挙に失うことを惧(おそ)れている。」

当たり前だ。
お互いがお互いの国益のために友好協力関係を維持しているのだから。
プーチンのロシアとアサドのシリアの関係はそのようなもので
ロシアがアサド政権を支えるのは当然。

「ロシアによる同政権支持は、無償の一方的な好意にもとづくものではない。アサド政権はロシアに対し基地の供与など、これまで以上の便宜を図る必要がある、と。」

これも当たり前田のクラッカー。
主権国家間の同盟とか協力とは相互に利益があるから成り立つわけで。
片方だけが一方的に利益を得る関係なら属国あるいは植民地。

「対ウクライナ攻勢は暫(しばら)く以前から膠着(こうちゃく)状態におちいったために、ロシア国民はうんざりしかけていた。」

ウクライナ問題は、ロシア側の勝ちで事実上決着している。
もともとロシア国民のプーチン氏への信頼は
ソ連崩壊時(エリツィン時代)に経済が困窮して
塗炭の苦しみを味わったロシア国民の経験に裏打ちされている。
ほんの15年前のことを皆が覚えているから
簡単に「うんざり」してプーチン不支持になることはない。

「西欧人が好むチェスなどのゲーム類では、交互の順番原則を無視して攻勢をかけることは、ルールに違反する行為に他ならない。それにもかかわらず」

チェスと現実世界の攻防は違うでしょう~
次々と策を立てて実行するなんて「ルール違反」だ、だからプーチンは怪しからん!
と言いたいらしいが、あまりにも幼稚すぎる。
一国の指導者がチェス気分で外交をするなら、その方がよっぽど怪しからんと思う。

「戦局が泥沼化し、長期戦の様相を帯びてくると、経済、科学、技術能力を含め総合点で勝る方の側が勝利を手にする。
 このことを熟知するプーチン氏は当然、短期決戦を望む。」

古今東西、あるレベル以上の指導者なら皆知っているし
従って長引かせずに自国に有利な決着に導こうと戦略を立てるのだ。

「もしプーチン氏がシーア派のアサド政権支持を続けるならば、ロシア国内で多数を占めるスンニ派の反発も大きくなるだろう。」

ロシア国内でイスラム教徒の宗派対立が深刻だとは知らなかった。
元々ソ連時代には宗教は否定されていたらしいし
ロシア国民の中でムスリムは20%くらい。
スンニ派が多数なのは事実だが、
だからイランと付き合うな、シリアと付き合うな、サウジと仲良くしろなどと
政治や外交を左右する影響力があるとはとても思えない。

「米欧諸国の首脳たちは、そういう訳にはゆきかねる。自国ばかりではなく、他国との間で煩瑣(はんさ)な調整に従事せねばならない。」

表では確かにそうだ。
その代わり裏では様々な工作をやっている。
先日も書いたが、アラブの春で米国がリビアの反政府勢力に武器を供与して
カダフィ大佐の殺害が成功した後、その武器をシリアに移そうとした。
そういう裏工作には「煩瑣な調整」は一切不要ですよね~?

「プーチン政権は、シリア作戦の遂行中にトルコとの関係を悪化させてしまった。」

トルコは反アサドであり、隣国のシリアとはクルド人問題など
複雑に利害が衝突する。
関係悪化の決定打はトルコによるロシア軍戦闘機撃墜だ。
ロシア人パイロットが殺された。
あの事件、エルドアンが承知していたかどうかは疑問だし
ロシア・トルコの関係を悪化させたのがプーチンだと
一方的に決めつけるのは、どうかと思う。
ロシアもトルコも損をしたのだから、
じゃあ得をしたのは誰かを分析して裏を探るくらい
専門家ならやってほしいなぁ~

「ロシアはクリミアを合併させる代わりに、ウクライナ全体を欧州連合(EU)側に接近させた。同様にプーチン大統領はトルコと衝突、トルコをNATO側へ押しやってしまったのである。」

ウクライナのポロシェンコ大統領が4月上旬に訪日し
日本は経済支援を約束した。
ウクライナは経済的に相当厳しい状況だが
EU諸国からも米国からも支援は得られていない。
あの政変が米国の工作だったことは広く知られていて
ロシアに依存していたウクライナはかき回された挙げ句困窮しているのが現状である。
早晩、ウクライナはロシアとの関係を元通りに修復するだろう。
トルコについても、お互いの利益が一致する部分でロシアとの関係は改善されると思う。
従ってウクライナ問題及びシリア問題においては
プーチンが勝利者なのだと私は思っている。

プーチンさん、さすがです♪♪


というわけで、
木村氏の論文は、当たり前のことや関係ないことを並べて
何とかしてプーチンが悪い、ロシアが悪いというこじつけをしているとしか
私には読めない。

突っ込むのはとても面白かったけど^^


産経新聞 4月19日正論
短期決戦に勝負をかけるプーチン大統領 だがトルコとの関係悪化など「反作用」も 木村汎・北海道大学名誉教授
 ≪アサド政権継続の目的は達成≫
 ロシアは昨年9月、突如シリアへの空爆を開始し、全世界を驚かせた。ところが今年3月、同じシリアから主力部隊を撤退させると発表し、再び耳目を聳動(しょうどう)させた。しかし冷静に考えてみると、プーチン大統領によるこの種の電撃作戦は、ロシアの現状、なかんずく外交戦略を反映したものに過ぎず、格別驚くに値しない。
 まず、ロシアのシリア空爆は複数の目的で開始された。第1の狙いは、アサド政権の継続である。一般的にプーチン大統領は、米欧諸列強から経済、その他の支援を得て、人民が下から反乱を起こし、「レジーム・チェンジ(体制転換)」を試みる動きに嫌悪感を抱いている。他方ロシアはアサド政権から数々の軍事的、経済的な便宜や利益を得ており、同政権が万一崩壊すれば、ロシアはそれらを一挙に失うことを惧(おそ)れている。
 ロシアは自らが実施した約6カ月間の空爆、その他の軍事行動によって、アサド政権のシリア国内での実効支配地域を拡大させ、同政権を少なくとも当分の間、安泰にすることに成功した。アサド政権に対し恩を売るとともに、次のメッセージも送った。ロシアによる同政権支持は、無償の一方的な好意にもとづくものではない。アサド政権はロシアに対し基地の供与など、これまで以上の便宜を図る必要がある、と

≪先制攻撃で攻勢をかける戦術≫
 現ロシアが直面している国内の諸困難や矛盾からロシア国民の目を逸(そ)らせることも、プーチン政権によるシリア空爆開始の大きな狙いのひとつだった。対ウクライナ攻勢は暫(しばら)く以前から膠着(こうちゃく)状態におちいったために、ロシア国民はうんざりしかけていた。そのような欲求不満を一気に解消させるためには、クリミア合併につづく「勝利をみちびく小さな戦争」がもう一つ必要だったのだ。
 プーチン氏が好んで採る電撃作戦戦術は、彼が柔道からくみ上げた教訓と無関係ではなかろう。すなわち、相手の隙を突き、先制攻撃を行うことを躊躇(ちゅうちょ)しない戦術である。ちなみに、西欧人が好むチェスなどのゲーム類では、交互の順番原則を無視して攻勢をかけることは、ルールに違反する行為に他ならない。それにもかかわらずプーチン大統領は、クリミアの併合、シリア空爆、シリアからの主力部隊の撤退、そして北方領土へのミサイル配備-など一連の先制攻撃をかけ、一挙に有利な立場に立とうとする。
 だが、緒戦で目覚ましい戦果を収めた者が必ずしも最終勝利を収めるとはかぎらない。日本軍による真珠湾攻撃、ヒトラー・ドイツによる対ソ電撃戦、ソ連によるアフガニスタン攻撃などは、それを実証する。戦局が泥沼化し、長期戦の様相を帯びてくると、経済、科学、技術能力を含め総合点で勝る方の側が勝利を手にする。
 このことを熟知するプーチン氏は当然、短期決戦を望む。
とりわけ現ロシアはウクライナ東部に加えてシリアでも戦線を開き、「二正面戦争」を遂行する余裕など持ちえないはずだ。
 戦費負担だけからいってもそうである。もともとシリア空爆は、原油安、ルーブル安、米欧による制裁によってもたらされた経済「三重苦」から、ロシア国民の目をそらす狙いで始められた。その意図は功を奏し、プーチン大統領の支持率は89・9%にまで跳ね上がったものの、その後は82%まで下落している。
 もしプーチン氏がシーア派のアサド政権支持を続けるならば、ロシア国内で多数を占めるスンニ派の反発も大きくなるだろう。

≪勝利者とはいえないプーチン氏≫
 プーチン大統領のシリア政策は、一見する限り大成功を収めたかのように映る。同政策は単純明快な手法で実施された。ほぼ独裁的な権力を持つ同大統領は議会に予(あらかじ)め諮ったり、事後に諒承を求めたりする必要なく、己の一存で空爆も撤退も自由自在に決めうる。
 ところが他方、米欧諸国の首脳たちは、そういう訳にはゆきかねる。自国ばかりではなく、他国との間で煩瑣(はんさ)な調整に従事せねばならない。シリア国内でも、はたしてどの諸勢力をどの程度、支援すべきなのか。また、紛争を徒(いたずら)に激化させて、シリアから難民流出を増大させるのは禁物とのジレンマにも直面している。
 だからといって、シリア紛争でロシアが一方的な勝利者になったと結論するのは、時期尚早だろう。一例を挙げるにとどめるにしても、プーチン政権は、シリア作戦の遂行中にトルコとの関係を悪化させてしまった。トルコは、かつて北大西洋条約機構(NATO)のメンバー諸国のなかで最も親露的な国家のはずだった。ロシアの提案を受けて「トルコ・ストリーム」石油パイプライン構想を実現することにも積極的な姿勢を示していた。
 ロシアはクリミアを合併させる代わりに、ウクライナ全体を欧州連合(EU)側に接近させた。同様にプーチン大統領はトルコと衝突、トルコをNATO側へ押しやってしまったのである。